自筆証書遺言と公正証書遺言とではどちらが優先されますか。
相続に際し、自筆証書遺言と公正証書遺言とが見つかって、その内容がお互い食い違っていたらどちらが優先されるでしょうか。
例えば、遺産である土地Xについて、自筆証書遺言には、「土地Xは相続人Aのものとする」と書いてあり、公正証書遺言には、「土地Xは相続人Bのものとする」と書いてあった、という場合です。
もしかしたら、何となく言葉の雰囲気で公正証書のほうが優先されるような印象を持つかもしれませんが、遺言が公正証書であることは、優先順位に影響しません。実は、この場合、どちらも遺言としての法的な価値は同じなのです。
したがいまして、この質問への回答は、「それだけでは、どちらともいえない」となります。
ここで話が終わっては、AもBも困ってしまいます。相続争いが起きかねません。そこで、このような場合、法律には明確な優先順位の基準が定められています。
新しい遺言が優先する
優先する基準は、遺言を作成した日付です。より新しい日付の遺言が優先されます。古い遺言を新しい遺言によって撤回した、とみなされるからです。(民法1023条1項)
これは、すべての遺言に共通するルールです。どんなに数多く遺言が見つかっても、常に新しいほうが優先です。もっとも新しい遺言こそが、本人の最終的な考えに違いないといえるからでしょう。
複数の遺言の内容が矛盾しない場合
では、古い日付の遺言と新しい日付の遺言の内容が、お互いに矛盾していない場合はどうでしょう。
例えば、古い遺言と新しい遺言の計2通の遺言が見つかり、古い遺言には、「A銀行の預金は妻のものとする」と書いてあり、新しい遺言には、A銀行の預金については何も書いておらず、「自動車は娘のものとする」とだけ書いてあったとします。
この場合、内容はお互いに矛盾していません。そのため、古い遺言も新しい遺言もどちらも法的に有効です。
民法1023条1項(前の遺言と後の遺言との抵触等)第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。