配偶者や親族をNPO法人の役員にしてもいいですか。
この質問は、厳密にいえば、ある役員の配偶者など身内を、同じNPO法人の役員にすることが法律上可能でしょうか、ということです。
原則として、身内を同じNPO法人の役員にすることはできません。それを許せば、特定の血縁関係や婚姻関係に属する一族の発言力が過剰に強まるおそれがあり、非営利的な目的のために組織されたはずのNPO法人という存在意義に、そぐわないためでしょう。
ただし、ここで「原則として」と前置きしたのは例外があるからです。ある条件を満たせば、複数人の身内を役員にすることは可能です。
役員の条件
ではまず、身内を同じNPO法人の役員にすることを制限している法律である特定非営利活動促進法21条を読んでみます。ここには以下のように書いてあります。
役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が一人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の三分の一を超えて含まれることになってはならない。
(特定非営利活動促進法21条)
法令の条文は文章表現が独特なので、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、よく読むと、身内を役員にすることが絶対にダメだとは書いてありません。条文の前半と後半とは「又は」のところで別れ、それぞれに禁止条件があるのがわかります。
(1)前半では、役員1名につき身内の人数が2名以上になることを禁止しています。ということは1名までなら許されます。
(2)後半では、ある役員につき、役員自身とその身内とを合計した人数が、役員総数の3分の1を越えることを禁止しています。ということは合計が3分の1以下なら許されます。
この(1)と(2)を合わせて考えると、役員の総数が5名以下の場合は、身内を役員として1名も入れてはならないが、役員総数が6名以上の場合には、身内を1名まで許す、という意味になります。
いいかえれば、どんなに役員総数を増やしても1名まで(本人+身内1名=合計2名)しか追加できません。
なお、(1)も(2)も、役員1名あたりの身内の人数について制限しているのであって、たとえば、役員総数が6名で、その内訳が夫婦3組である場合は、許されることになります。
身内の定義
ここでいう「身内」とは、特定非営利活動促進法21条の「その配偶者」と「三親等以内の親族」のことを指します。
つまり、①ある役員の配偶者と②ある役員の三親等以内の親族です。
具体的に、あるNPO法人の役員をAとして、禁止されるAの「身内」とは以下のとおりです。
- Aの父・母
- Aの祖父・祖母
- Aの曽祖父・曽祖母
- Aの子
- Aの孫
- Aの曾孫
- Aの叔父・叔母・伯父・伯母
- Aの兄弟姉妹
- Aの甥・姪
- ここより上にある者の配偶者
- Aの配偶者B
- Bの父・母
- Bの祖父・祖母
- Bの曽祖父・曽祖母
- Bの叔父・叔母・伯父・伯母
- Bの兄弟姉妹
- Bの甥・姪
上記リストの10番目は、1から9までの者の配偶者のことです。Aの三親等以内の親族には、Aの直接の血縁者だけでなく、その配偶者も含まれるのです。
そのため、例えば、7番目Aの伯父の妻も対象です。また、1番目Aの父と母が離婚して別の人と再婚している場合は、その再婚相手も対象です。
特定非営利活動促進法21条(役員の親族等の排除)第二十一条 役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が一人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の三分の一を超えて含まれることになってはならない。