社員としての入会希望者に対し入会を制限することはできますか。
原則として、社員としての入会希望者の入会を制限することはできません。
なぜなら法律は、NPO法人に対し、社員の入会・退会に不当な条件を付けてはならないと規定しているからです。(特定非営利活動促進法2条2項1号イ)
不当な条件とは何か
不当な条件を付けてはならないのであれば、不当でない条件ならばよい、ということになります。
いいかえれば、条件を付ける場合にはそのNPO法人の目的や活動内容に照らして、合理性が客観的に認められるものでなければならない、ということです。
しかし、実際にこの基準を満たして入会条件を設けるのは、きわめて難しいと思います。
例えば、あるNPO活動をおこなうために何らかの技術・資格が必要だとして、その技術・資格を入会条件とすることは認められないでしょう。
なぜなら、NPO法人の目的は、その活動に内部のメンバーだけが携わることではなく、その活動によって地域や社会に貢献していくことだからです。
その活動に特定の技術や資格が必要不可欠なのであれば、技術者や資格者を従業員として雇用したり、必要な時に外部に依頼したりすることもでき、その入会条件に合理性はありません。
別の例として、年会費や入会金を高額に設定すれば、事実上、入会を制限しているのと同じなので、これは一種の入会条件です。したがって、これも認められないでしょう。高額の支払いは誰にでもできることではなく不当な条件だからです。
入会も退会も、その手続も簡単に
この規定は入会だけでなく退会についても同じです。法律の条文には社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さない
と定めてあるからです。
入会・退会に不当な条件を付さない、というのはその手続きも簡単にしておかねばならない、という意味です。
例えば、「入会するには、入会を希望する理由を400字詰め原稿用紙3枚に手書きしてもらいます。既存会員の紹介状も必要です。役員による面接試験も受けてもらいます」などというのでは、簡単とはいいません。実質的に不当な条件です。
なお、入会・退会の手続きの具体的な方法そのものは、そのNPO法人が独自に決めて構いません。一般的には、理事長が定めた入会届・退会届を使用する、というような規定を定款に置いておくことが多いようです。
特定非営利活動促進法2条2項1号イ(定義)第二条
2 この法律において「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の各号のいずれにも該当する団体であって、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。
一 次のいずれにも該当する団体であって、営利を目的としないものであること。
イ 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。